アルバムレビュー

Elect The Dead/Serj Tankian
Scars on Broadway/Scars on Broadway
SYSTEM OF A DOWN(SOAD)活動休止から約2年、バンドの中心人物2人の作品がそれぞれリリースされている。
まず、昨年末発売のサージ・タンキアン(Vo)のソロ作"Elect The Dead"、そして今年発売されたダロン・マラキアン(Gt&Vo)を中心に、ジョン・ドルマヤン(Dr)を含むバンド「Scars on Broadway(SOB)」の同名作だ。

どちらもいい作品だと思うし、SOADを彷彿とさせる音楽性を持っている。しかし、何か物足りないというのが正直なところ。
まず、サージのソロ作だが、歌メロが非常に冴えており、独特な歌唱もあってその点からSOADの色を強く感じる。SOADと比較すると、シャウトなど激しい表現は少なく、歌を聞かせるという面が強調されているように感じた。
SOBは、SOADにおいてサージの声と共に印象的だった、ダロンのヒステリックな歌唱が特徴的。また、重くキレのある曲調は、一瞬SOADを聴いているかと錯覚する。

最初にサージのソロを聴いた時に、作品の良さを認めながらも、ぼんやり感じていた物足りなさが何なのか、SOBのアルバムを聴いてはっきりした。
どちらも、SOADを非常に感じさせる作品ながら、SOADになりきれていないのだ。
この2作品を聴き比べて、サージの作品にSOBの演奏、SOBの作品にサージの歌唱が加わればSOADそのものじゃないか?と思わせる場面が多々ある。
SOADとこの2つを比べて物足りないと思う部分、少々抽象的になるが、前者は激情、後者は狂気ではないかと思う。
それぞれ、ダロン、サージの持っていたSOADの構成要素だ。
サージの精神性、ダロンの音楽性の非凡さがSOADを唯一無二なバンドにしていたのだと、今になって強く実感した。
ケミストリーという言葉は手垢がつき過ぎて使うのがはばかられる。
だが、まさにSOADはサージ、ダロンを中心としたメンバーの奇跡的なケミストリーの産物を言えるバンドだった。
単なる足し算ではない凄み、それが上記の2作品でほんの少し物足りなく感じた部分かもしれない。

彼らがSOADとして活動を休止してからも世界は変わり続けている。
彼らの盟友、RAGE AGAINST THE MACHINEも復活をとげ来日公演を行った。
社会的なメッセージを常に発信してきたバンドとして、SOADもまた世界に待ち望まれているバンドだろう。
音楽で世界が本当に変えられるかどうか、本当のところは分からない。
だが、彼らならとひょっとしてと感じさせる説得力がSOADの音楽には間違いなくあった。
こんな世界だからこそ、今彼らが一つになった音楽を再び聴きたいと強く願っている。


08/9/20



Chinese Democracy/Guns N' Roses
17年ぶりの新作で、タイトルが発表されてから、今年こそは出ると言われつつ10年は経ったと思われる待望の作品です。
既に伝説のバンドとも言える存在で、寡作かつ17年ぶりにアクセルの声で新作が聴けるかもしれないということで、今年最も注目されたアルバムの一つでしょうね。
ちなみに、このアルバムに参加しているオリジナルメンバーはアクセル・ローズ(Vo)のみです。

一聴して、良くも悪くも「こんなものだろうな」っていうのがまず持った感想です。
悪くない作品だとは思います。
2000年公開の映画「END OF DAYS」に提供された"Oh My God"から想像し得たイメージからの逸脱は無いので、大きな驚きもなかったです。
ただ、今アクセルの声の入った新譜を聴いているのは何か奇妙な感じですね。
この声をまた聴けたのはうれしいと同時に戸惑いのような感覚もありました。
曲によっては、声がそれほど前面に出ていなかったり、製作時期が違うせいか、声質が異なって聴こえるものがあったのが少し気になりました。
曲は、かつてのハイテンションな感じのものはあまりないですね。
スロー・ミッドテンポのものに関しては、かつてより薄味というか、気持ちブルージーさが減退しているかなという印象を受けました。
この部分は、スラッシュなどかつてのメンバーの貢献が大きかったからでしょう。
ただ、品質は低くはないので、大きな興奮もないですけど、反面裏切られたという気持ちもないですね。
元々、ファンのニーズに積極的に応えるよりは、やりたいことをやってるバンドではありますけど、品質の悪いものは作らないですしね。
今回は出ただけでも、「可でも不可でもない」というよりは、可だと思ってしまって、そこは惚れた弱みというかなんというか。
とりあえず、久々のこの音を楽しんでいます。

ただ、これは客観的に自分が知っているGN'Rというバンドの作品ではないんですよね。
全盛期のメンバーはアクセルのみ(一応ディジー・リードもいるみたいですが)なので、アクセルのソロ作品みたいなものだと思います。
勿論、アクセルはバンドの中心的な存在で、彼の声はGN'Rの大きな特徴だし、ソングライターとしての貢献も大きいので、それほど違和感無く受け取ることは出来るとは思います。
でも、全盛期のバンドを知る一ファンから見て、アクセルしかバンドにいないというのはやはり寂しいというか、複雑な感情があるのも事実です。
それに例えば、スラッシュ、ダフ、マットの元メンバーが3人いるバンドVelvet Revolverもアクセルさえ歌っていればGN'Rってそのものとも思える音で、どちらが本物かという風にも思ってしまいますよ。

そういう意味では、こちらも今年発売したかつての盟友(ごく短い期間でしたが)、METALLICAの新作とは全く意味合いが異なるアルバムですね。
METALLICAの場合、メンバーの結束が生み出した作品というイメージに対し、こちらはアクセルのエゴが全てでしょう。

ともあれ、出ただけでも奇跡的なので、さらに完璧な作品まで望むってのも贅沢というものでしょう。
そういうファンは多いでしょうが、自分も内容に多大な期待はしていませんでした。
今度こそ出てくれるということには、すごく期待はしていましたが。
好きなアーティストでも、ファンは手放しに甘やかすべきではなく、好きだからこそ真摯に受け止めるべきというのが持論ではありますが、自分にとってこの作品は例外なのかもしれません。
基本、私はいかに優れているかより、どのように好きかっていうのを書きたいタイプなんですが、今回の記事はその傾向が強かったかもしれませんね。
ジャンプにHxHが載っていてくれればうれしいという、冨樫ファンに近い心理かもしれません。
とりあえず、次の作品はこんなに待たせないで欲しいのと、今後かつてのメンバーでの再結成が行われることに期待してます。

08/1/12 (ブログより修正を加えて転載)





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