アルバムレビュー

APPETITE FOR DESTRUCTION/GUNS N' ROSES
87年発表のGN’Rのデビュー作。全米で1600万枚のセールスを記録している。
オーソドックスなスタイルのロックながら、骨太なグルーヴ、パンキッシュさを備えている。
VoのW・アクセル・ローズのカメレオンヴォイスと形容される、めまぐるしく変わるトーンの存在感がすさまじい。
このバンドが愛された理由の一つに典型的ロックスター体質であったことがあるだろう。いわゆる音楽をしてなきゃただのワルというう風格なのだ。実際、アクセルの悪童ぶりは半端ではなく、ライヴでの遅刻は当たり前、ライヴを途中でやめて帰り、暴動が起きたことも。(死者も出た。)メンバーのドラッグ摂取は日常茶飯事で、暴力を奮い逮捕されたこともある。他のバンドと喧嘩はするは、ライヴで放送禁止用語を連発するは、本当に話題に事欠かなかった。
実際、このバンドの黄金期は長続きせず、オリジナルアルバムは、91年の『USE YOUR ILLUSION』が最後となっている。
現在、オリジナルメンバーで残留しているのはアクセルのみ。今年のサマーソニックに出演が決定している。長い沈黙期間をやぶるこのステージに注目が集まっている。



100s/中村一義
中村一義の4thアルバムにして最新作。
中村一義ってだれ?って人も多いと思う。でも誰でも一度は見たことがあるだろう。ニッサンのCMで「4500円!」てやってた人だ。
この人は、音楽ファンにはかなりの支持を得てはいるが、何故かマイナー感が否めない。
(こないだタワーレコード行ったら、このアルバムが結構売れてて嬉しかった。)
中村一義はアルバムごとに進化している。もちろんこのアルバムも例外ではない。1stの『金字塔』ではブルーズ、2ndの『太陽』ではポップス、3rdの『ERA』ではロックと形容できる作風であった。ではこの『100s』はどう形容できるか。これまでの全てがここにあり、そしてバンド100式になったことにより進(深)化している。いうなれば、珠玉のバンドサウンドといったところだろうか。
中村一義の作風は、非常に暖かく、そして繊細かつ激しいという形容がぴったりだと思う。相反する要素のようだがこれら全てが同居しているのだ。
中村一義の作品は全てが傑作である。
そして、全てに愛があふれている。



A NIGHT AT THE OPERA/QUEEN
11月になると音楽雑誌などで、QUEENの特集が組まれることが多い。
多くのQUEENファンにとって11月は特別な月なのだ。

91年11月24日、QUEENのシンガー、フレディ・マーキュリーがエイズによって生涯を閉じた。
偉大なバンド、QUEENのヴォーカルとして、そして、人間として、フレディはその尊厳を守り続けた。

『A NIGHT AT THE OPERA』(邦題、オペラ座の夜)は、QUEENの代表作にして、歴史的名作だ。QUEENの4thとして75年に発表され、全英1位に輝いた。
この作品は、アルバム1枚を通して、オペラを思わせるコンセプト的な作風となっている。バラエティ豊かな作風、そして、全編において驚異的なテンション、クオリティを誇っている。
このアルバムのクライマックスは、もちろん"Bohemian Rhapsody"だろう。この曲は、初期QUEENの集大成的曲といってもさしつかえないだろう。目まぐるしい曲展開は、美しく、そして激しい。現在でも決して、色あせてはいない名曲だ。
その他の曲の出来も素晴らしく、"The Prophet's Song"などはこのアルバムの裏ハイライトともいえる荘厳さだ。
このアルバム一枚で、QUEENを語ることは決してできないが、一聴していただければ、QUEENがロック史における最重要バンドであることがわかってもらえると思う。いかにQUEENが特異なサウンドを持っていたか、そしてフレディがいかに稀有なシンガーであったか、この一枚で端的に感じられると思う。

フレディ・マーキュリーのご冥福をお祈りします。



AUDIOSLAVE/AUDIOSLAVE
AUDIOSLAVEは2002年、最も注目を集めたロックバンドの一つと言って間違いないだろう。

ザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)の脱退により、事実上活動停止となったRAGE AGAINST THE MACHINE。
そのザックを欠いたRATMのメンバーと、元SOUNDGARDENのVo、クリス・コーネルとが結成したバンド、それがAUDIOSLAVEだ。
90年代を席巻したこの2つのバンド、方向性は違えどその力が一つになったケミストリーにファンは皆注目した。
ザック脱退以来、様々な憶測が飛び交ったRATM周辺。
延期につぐ延期で結局その1stアルバムがファンの元に届いたのは2002年末のことであった。

その1stアルバムの音楽性だが、基本的にはオーソドックスかつ良質のロックと言って間違いないだろう。
クリスの歌唱は素晴らしく、ファンには納得の仕事だろう。方向性もどちらかというとSOUNDGARDENの方に近い。
RATMとの最も大きな違い(というかVoが変わっただけなのだが)はザックとクリスのヴォーカルスタイルの違いだろう。
ラップヴォーカルを駆使していたザックに対し、クリスは典型的なロックヴォーカリストだ。故にバンドのサウンドの方向性はRATMと大きく異なる。随所でトム・モレロの独特のギタープレイやリズム隊の粘っこさが感じられるものの、一聴してそれほど印象に残るものではなく、むしろクリスのVoを前面に押し出したスタイルとなっている。なおRATMの特徴の一つであった政治的な歌詞もここではなりを潜めている。
RATMがメンバーの個性がせめぎ合う緊張感溢れるサウンドだったのに対し、AUDIOSLAVEはメンバーの音の調和が心地よいサウンドであるだろう。
RATMのような隙の無さとは、全く異なりメンバーがリラックスして演奏しているように感じる。
RATMのような激しさを求めるファンにとっては物足りないかもしれないが、方向性は違えど間違いなくこれはロックだ。以前より多くのファンにアピール出来る音楽性だともいえる。ロックファンなら是非とも一聴してほしい。



ST.ANGER/METALLICA
世界的モンスターバンド、METALLICAの最新作。
現在、ベーシストはジェイソン・ニューステッドからロバート・トゥルージロに代わっているが、このアルバムではプロデューサーのボブ・ロックがプレイしている。
METALLICAは83年に1stアルバム『KILL 'EM ALL』をリリース。その類を見ないスピード、重さ、複雑な曲展開で世界を席巻する。
このときメンバーは、ラーズ・ウルリッヒ(Dr)、ジェイムズ・ヘットフィールド(Vo,Gt)、カーク・ハメット(Gt)、クリフ・バートン(Ba)。(アルバムリリース前、MEGADETHを後に結成するデイヴ・ムステインが在籍していた時期も)
当初、その音楽性は広い支持は得られず一部で熱狂的支持を受けるアンダーグラウンドな存在であったが、アルバムをリリースする度にMETALLICAは確実にその存在感を増していった。
だが、3rd『MASTER OF PUPPETS』のツアー中の事故でクリフ・バートンが他界する。(この事件が今後のMETALLICAに大きな傷跡を残す)
その後、ジェイソン・ニューステッドを加え、バンドは活動を続行し、4th、5thアルバムをリリース。5th『METALLICA』(通称ブラックアルバム)で世界の頂点に上り詰める。このアルバムのセールスは全世界で1500万枚に達する。
このアルバムから、METALLICAの凶暴性はなりを潜め、速さよりも重さを重視したオーソドックスなロックに変化する。
この傾向は2枚のアルバムでより顕著になり、論議をかもし出す。
さらに、このころには、クリフに代わり加入したジェイソンとの関係が絶望的に修復不可能になる。そして、その後ジェイソンが脱退し、バンド内にも様々な問題が圧し掛かり、METALLICAは窮地に立つこととなる。
だが、2003年METALLICAは帰ってきた。アル中で入院していたジェイムズは酒を絶ち、復活。ベーシストにロバート・トゥルージロを加えて『ST.ANGER』を完成させる。(アルバムではボブ・ロックが演奏している)
バンドはこの厳しい期間、カウンセラーを雇うなどし、修復につとめたという。
『ST.ANGER』は、かつてのMETALLICAが帰って来たかのように激しい。
だが、決して原点回帰ではない。明らかに『METALLICA』以降の作品を踏まえた作品だ。
音はただひたすら生々しく、曲展開は複雑、そして激しい。
かつてのような尖った音ではなく、鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。
彼らが今、こういうアルバムを出したことは意義のあることであろう。
その影響は『METALLICA』には及ばないかもしれないが、その意義は凌ぐかもしれない。
彼らが相変わらずMETALLICAという存在で再びこういう音楽をやってくれたことはファンとして嬉しい。





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